「To be, or not to be」の原典を読む

【曲名】To be, or not to be

【原典】ハムレット

【書籍】新訳 ハムレット (角川文庫)

【読了時間】3時間程度

【読みやすさ】★★★★

【感想】

 チームBの楽曲「日蝕」の原典「マクベス」に続き、シェイクスピア四大悲劇の1つ「ハムレット」を読みました。以前「マクベス」を読んだとき、たくさんの注釈があって内容を補完してくれた点がとても良かったので、同じ翻訳者の本を選びました。「ハムレット」にはクォート版(Q版)とフォリオ版(F版)の2種類があるようで、本書はF版が基本となっていますが、注釈によりQ版固有の台詞が盛り込まれていたり、ここからここまではF版固有の台詞であると明記されていたりと、Q版とF版の違いが分かるようになっています。

 また、翻訳のこだわりについては、巻末の訳者あとがきに記載されていますが、非常に言い回しにこだわって翻訳されているところが良かったです。文章を目で追っているだけでも登場人物の台詞がリズミカルであることが感じられる点や、言葉遊びが日本語で綺麗に置き換えられている点がとても印象的でした。直訳なのか意訳なのか分かりませんが、情景の例えがとても美しいところも好きでした。

 

※※※以下、ネタバレ注意※※※

※※※ゲーム内ストーリー及び原典のネタバレを含みます※※※

 

【ブラスタにおける配役】

モクレン ハムレット

クー   レアティー

カスミ  クローディアス(デンマーク王、ハムレットの叔父)

柘榴   ?  

玻璃   ホレイショー  

客    ?

配役に一部不明な点がありました。分かり次第修正します。

 

【ゲームと原典を踏まえた感想】

 実質のチームCお披露目公演の楽曲「To be, or not to be」ですが、配役が不明なことろもありながらも、トークストーリーにおいて原典や役についての言及が多かったように思います。そのため、トークストーリーを読むことで、自分の原典に関する考えと異なる解釈があることを知ることができ、面白かったです。

 1つ目は、配役です。スターレスの公演は当て書きとされていて、モクレンは役のことについて、「ハムレットには復讐しかない。ダンスしかない私と同じ。」と言っています。個人的には原典を読んでもモクレンハムレットが似ているイメージはなかったので、1つのことに固執しているという共通点があることになるほどなあと思いました。また、クーがレアティーズ役というのも、あまりしっくり来ていなかったのですが、スターレスの公演において、ハムレットと対照的な存在として描かれているのがレアティーズであり、ずっと1つの場所にいられない(と言うクーは、ダンスしかないと言うモクレンと対照なのかなと思いました。

 2つ目は、ハムレットの復讐が正当であるとは限らないというところです。私は、デンマーク王のクローディアスが、前代の王(ハムレットの父)を殺して王位に就いたことを真実であると終始疑うことなく読んでいたので、最初はトークストーリーの話が理解できませんでした。ですが思い返してみると、クローディアスが前代の王を殺したという内容は、ハムレットの前に現れた亡霊が言っているだけで事実が明らかになるシーンはないので、これもなるほどと思いました。ただ、クローディアスは独白のシーンで自分の罪は兄弟殺しの罪であると言っているので、ほぼ黒なのでしょうが…。

 本をひと通り読んだ後、あとがきを読んで物語の解釈や背景を知るのが好きなのですが、今回はトークストーリーにはっとさせられる部分があって、もう1つあとがきを読んだような気分になり、楽しかったです。